第5章

スマホをじっと見つめ、三分間も送信ボタンの上で指をさまよわせた。

送信ボタンを押した瞬間、胸が内側から潰れるような感覚に襲われた。

十秒後。『もちろん!明日の放課後、図書館でどう?』

こみ上げてくる涙に、私はぎゅっと目を閉じた。

『わかった』

それだけ。すべてを変えてしまった。

その夜は一睡もできなかった。ただ、陽翔の笑顔、プールサイドでのあのキス、彼が「君は僕に、もう一度奇跡を信じさせてくれた」と言ってくれた時のことを考え続けていた。

午前四時ごろ、私はもう一度怜奈の書類に目を通した。銀行口座、日付、金額――すべてが符合していた。お父さんは本当にこんなことを...

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