第6章

一ヶ月。

陽翔がスイスに旅立ってから、ちょうど一ヶ月が経った。彼がいない生活にも、もう慣れたと思っていた。

今朝、あのニュースが報じられるまでは。

「ゼネコン社長の高橋健司に手抜き工事疑惑。新設の小児病院が倒壊し、作業員三名が重傷……」

テレビ画面を見つめる私の手から、牛乳の入ったコップが滑り落ち、床で砕け散った。

まただ。

すべてが、また振り出しに戻ってしまった。

前の人生とまったく同じ。お父さんのスキャンダルが発覚したのは、私が十七歳になる誕生月だった。前と同じように、あの小児病院は崩れ落ちた。

陽翔の運命を変えれば、すべてが変わると思っていた。でも、...

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