第5章

美智視点

ハンドバッグに手を入れ、慣れ親しんだレンジローバーのキーの重みを取り出した。真の自慢であり、宝物。何ヶ月もかけてカスタマイズし、決して誰にも運転させなかった車。

なのに今、私がそれを運転している。

「お願い」私はキーを掲げて言った。「これを見て。思い出せるかもしれないから」

真の視線がキーに注がれ、ほんの一瞬、心臓が一拍打つ間だけ、彼の表情に何かがよぎるのが見えた。瞳孔が収縮する。指が病院の毛布の上でぴくりと動く。顎が食いしばられ、筋肉が跳ねるのがわかるほどだった。

彼は絶対にこれを認識している。私にははっきりとわかった。

それから、彼の顔は再びあの無表情で冷...

ログインして続きを読む