第2章

 肌に隠し持った「影の魔女」の禁じられた小瓶は、死刑宣告よりも重く感じられた。明日になれば、たった一滴で私の「番の絆」を永遠に砕ける。

 けれど今は、黒曜石群れの私設医務室へ――最後の一度だけ、あそこへ行って生き延びなければならなかった。

 かつては広々としていた診療所は、息が詰まるほどだった。偽善じみた祝辞が渦を巻き、甘ったるい鎮静香のむかつく臭いが鼻の奥にこびりつく。扉をくぐった瞬間、空気が一気に凍りついた。

 祝福を授けに来た一族の長老たちと、かつて私をあれほど残酷に見捨てた両親や親族が、寝台の周りにぎゅうぎゅうに集まっていた。

 エララはふかふかの枕にもたれ、新生児の子狼を抱きかかえながら、胸焼けがするほど甘い笑みを浮かべている。サイラスが自ら口元に運ぶ希少な滋養回復スープを、彼女は嬉々として匙を重ねて飲み下していた。

 あの見慣れた白磁の器を見た途端、胃の中が激しくねじれた。あれは――「浄化の儀式」だと偽って私の血を抜き取った直後、「回復のため」と言って飲ませた、まさにあのレシピだ。

 私の匂いを捉えたのだろう、サイラスの金の瞳に一瞬だけ動揺が走った。

 彼はすぐに器を置き、部屋を横切って私を扉際の隅へと引き寄せた。

 声を落として囁く。「アリア、勘違いするな。エララの番は境界線の小競り合いに張り付いていて戻れない。彼女は産んだばかりで、落ち着くには高位のアルファの匂いがどうしても必要なんだ」

 彼は重いため息を吐いた。「昔、お前をはぐれ者の集落へ捨てたことで両親をまだ恨んでいるのは分かる。だが結局、エララと子どもは無関係で、罪はない」

 無関係? あれは怪物だ。私の肉と血と、奪い取られた狼だけで育てられた――。

 私は冷たく睨み返し、今こそ絆の解消を要求しようと口を開きかけた。そのとき、エララが寝台の上から耳を裂くような悲鳴を上げた。

 子狼をかばいながら、彼女は転げ落ちるようにマットレスを降り、私の前に膝をついた。嗚咽を漏らし、取り乱したまま泣き叫ぶ。

「アリア、お願い! 狼を失ったあなたが死にたいほど苦しいのも分かる、私がルナの座を奪ったと思って私を憎むのも分かる……怒りは私にぶつけていい、どれだけでも。でもお願い、お願いだから、あの闇の呪いで私の赤ちゃんを狙うのはやめて! この子は何も悪くないの!」

 群れの息を呑む声が広がる中、震えるエララは首から占視のペンダントを引きちぎった。

 それがぼうっと光を放ち、空中におぞましい精神の残響を投影する。闇の魔力で脈打つ血紅のルーンが、毒蛇のように這い回り、エララの妊娠の悪夢のすべてに、死にゆく胎児の泣き声が絡みついていた。

 最悪なのはそこではない。あの凶悪な呪いは、疑いようもなく私の砕けた魂の気配をまとい、かすかに、しかし紛れもなく――私の血の匂いを帯びていた。

 私は拳を握り締め、指の節が白くなるまで力を込めた。

 意識がはっきりしたまま内なる狼を引き剝がされ、空っぽの抜け殻にされたあの日以来、基本的な群れの心のリンクでさえ維持できない。いったいどこに血の呪いを放つ力があるっていうの?

 これは明らかに、エララの身体が私から盗んだ狼を拒絶しているだけだ。サイラスが妊娠を成立させるために何度も私の血を搾り取り続けた、その避けられない残酷な超常の反動――ただそれだけだ!

 衝撃に、私の視線はサイラスへ跳ねた。

 彼の目に一瞬、罪悪感の影が宿った。だが次の瞬間には、エララを守るための冷たい憤怒に呑み込まれていた。

 彼らは、臓腑を抉るような盗みを、私の呪いに見せかけることに成功したのだ。

「この腹黒い毒蛇め!」父親が咆哮した。

 アルファの命令の圧を解き放ち、彼は私を平手で殴り飛ばした。

 背中が冷たい石壁に叩きつけられる。狼なき背骨が軋む、空虚で嫌悪感を催す音が、死んだような沈黙の中に響いた。

 以前なら、こんな圧など毛並みひとつ乱れなかった。今は、内臓が引き裂かれるみたいに痛い。

「不妊の出来損ないになったからって、自分の妹の子を毒で殺す気!?」母親が吐き捨てた。隠しようのない嫌悪で目が濁っている。

 部屋は悪意ある唸りと囁きで爆発した。

「狼を抜かれた女が狂うって、最初から分かってた!」

「はぐれ者に皮を剝がされて死ねばよかったのよ! サイラス様が長老たちと争ってまであいつを置いたのに、恩を仇で返すなんて!」

 視界が白くなる痛みの中、私は反射的にサイラスを見た。三年間、どれほど侮蔑を浴びても、彼はいつもオーラを燃やして前に出て、私を庇ってくれた。

 なのに今回は、落ち着かせる松の香りを、ひと欠片すら放たない。

 氷で彫ったみたいな顔のまま、彼は歩み寄り、私の手首を掴んだ。骨が折れそうなほど強く。「アリア、これは異常だ。みんながお前みたいに壊れるまで止まらないつもりか? エララに謝れ。今すぐ」

 灼ける痛みが腕を駆け上がる。それ以上に、首筋の番の印が毒のように熱く焼けた。

 私は何を期待していたのだろう。どうして忘れられる? エララと私の間で、彼はとっくに選んでいた。たとえその選択が、私を祭壇に縛りつけ、自分の手で胸から内なる狼を抉り出すことを意味していたとしても。

 口の中に広がる鉄臭い血の味を飲み込み、私は顔を上げた。涙は一滴だって落とさない。

「やってもいないことを、なんで私が謝らなきゃいけないの!」

「彼女があの時のことと無関係だって?」私はサイラスの偽善的に満ちた目を真っ直ぐ見据え、底冷えするような、乾いた笑いを漏らした。「サイラス、私の目を見て言ってごらんなさい。あの女は……本当に無関係なの?」

「ここにいる誰が、本当に無関係なのよ!?」

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