第140章

ポール視点

背後でバスルームのドアがカチリと静かに閉まったが、その音は俺の心の中では雷鳴のように響き渡った。手が震えていた――恐怖からではない、断じて違う――だが、あのドアを叩き壊し、ずっと俺のものだったものを手に入れたいという、抑えきれない衝動からだ。

俺の、美しくも反抗的な小さな月の狼。

大理石の壁に背を押し付け、胸の内側から掻きむしってくる獣と戦いながら、荒い息を吐いた。彼女の肌の香りがまだ手にこびりついている――俺が味わったどんな極上のドラッグよりも、酔わせ、狂わせる香りだ。指を唇へと運び、彼女の温もりの記憶を味わった。

自分が賢いとでも思っているのだろう。

俺の内のどこか暗...

ログインして続きを読む