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リナ視点

信じられないほど良い香りが、私を深い眠りの底から引き戻す――焼きたてのパン、カリカリのベーコン、淹れたてのコーヒー、そして口の中に唾液が溢れるような甘い香り。一瞬、まだ夢を見ているのではないかと疑った。目覚めた瞬間にこんな完璧な香りが漂っているなんて、あまりにも出来すぎているからだ。

私は目を開けないまま腕を伸ばし、自分の二の腕を強くつねった。跡が残るくらいに。

「いった」

私は小さく唸り、すぐに自分の行動を後悔した。現実かどうか確かめる方法として、あまりにも子供じみている。

「今、自分で自分をつねったのか?」

隣からレオの声が聞こえる。その声には楽しげな響きが滲...

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