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リナ視点

レオの後について家に入ると、息が詰まるような静寂が私を包み込んだ。震える手で宿泊用のバッグを強く握りしめる。いつもなら「我が家」だと感じられる慣れ親しんだはずの空間が、今は冷たく、拒絶されているように思える。私の番(つがい)から波のように押し寄せる緊張感が、この空気を淀ませているのだ。

レオはキッチンのカウンターに鍵を置いた。その動作は計算されたように正確で、どこか他人行儀で、感情が完全に抑制されている。彼は私と目を合わせようとしない。その徹底した視線の拒絶は、どんな罵倒の言葉よりも深く私の心を抉った。

「レオ」バッグを床に置き、私はおずおずと彼に歩み寄りながら、静かに...

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