チャプター 63

リナ視点

私はその場に立ち尽くし、完全に凍りついていた。たった今起きたことも、レオが私に伝えようとしていることも、頭では処理しきれずにいた。世界が自分の周りでぐるぐると回っているように感じるのに、私だけはその中心で微動だにせず、信じられない思いと恐怖の泡の中に閉じ込められていた。

瞬間移動。特殊能力。月の女神からの贈り物。

その言葉たちはガラスの破片のように頭蓋骨の中で跳ね回り、深く切りつけてくるものの、まったく意味をなさなかった。レオが話しかけているのは聞こえるし、唇が動いているのも見える。けれどその音は、まるで水中から聞こえてくるかのように歪み、理解不能だった。

「リナ」

レオの...

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