第4章
三ヶ月。
私は床から天井まであるカフェの窓際の席に座り、松通りを行き交う人々の流れを眺めていた。ここが私の新しい習慣になっていた――毎週土曜の午後になるとここへ来て、ラテを一杯注文し、ごく普通の独身女性が自分の時間を楽しんでいる、そんなふりをするのだ。
幸男の件は、もう三ヶ月前のことだ。田中医師が彼の治療を引き継いでから、幸男に関する連絡は一切来なくなった。電話も、メッセージも、そしてもちろん、不意の訪問も。まるで彼が私の世界から完全に姿を消してしまったかのようだった。
それで安堵すべきなのだろう?
コーヒーカップを持ち上げ、目の前の新聞に集中しようとした。だが、外の騒がしさに気を取られた。
「おい、どこ見て歩いてんだよ!」
「わりぃ!」
オレンジ色のパーカーを着た若い男が、通り沿いの屋外イベント会場で大きなキャンバスに向かっていた。その動きは集中の極みにあり、周囲から投げかけられる声援や好奇の視線さえ、彼の耳には届いていない。
筆先は彼の手の中で命を吹き込まれたかのように、白いキャンバスを滑らかに流れ、鮮やかな線を描き出していく。
私は新聞を置き、思わず見入ってしまった。
その絵は特別だった。ありふれた模様や宣伝文句ではなく、幾層にも重なった色彩が息づく芸術作品。青と緑のグラデーションは初夏の海が寄せては返す波のように流れ、抽象的でありながら、胸の奥に希望を灯すような金色の光点が夜空の星のように散りばめられていた。
コーヒーの最後の一口を飲み干し、ほとんど無意識に店を出ていた。
「この絵、特別ですね。どんな物語があるんですか?」
彼は描くのをやめ、こちらを振り返った。若い顔。その瞳には、私が長いこと見ていなかったもの――純粋な情熱が宿っていた。
「癒やしだ」彼は顔を上げ、私に微笑んだ。「この街には、灰色を癒やすための色がもっと必要なんだ」
私は呆然とした。「癒やし? 私、セラピストなんです」
彼の目は、まるで宝物でも発見したかのように、ぱっと輝いた。「じゃあ、君も俺も癒し手ってことか。やり方が違うだけで!」
「そんなふうに考えたことはありませんでしたが」
確かにそうだ。私の世界では、癒やしとは常に長い対話、複雑な理論、そして厳格な手順を意味していた。目の前のこの見知らぬ青年は、ほんの数色でキャンバスの上に希望を創り出すことができるのだ。
「俺は啓介」彼は筆を置き、絵の具で汚れた手を私に差し出した。「佐藤啓介」
「映奈です」彼の手を握ると、手のひらに残る絵の具の温かい感触が伝わってきた。「水野映奈」
「医者さん?」
「まだですけど、もうすぐ」
「じゃあ、先生って呼ぶな」彼はにやりと笑った。「カッコいいだろ」
思わず笑ってしまった。この三ヶ月で、誰かにこんなに簡単に笑わされたのは初めてだった。
「もっと見るか?」啓介は会場の向こうを指差した。「この辺にはもっとたくさん作品があるんだ。俺が案内してやるよ」
断るべきだった。書かなければならないレポート、準備すべきケース、そして読むのを待っている山積みの専門誌。でも……。
「はい」
それから一時間、啓介は私を連れてイベント会場を歩き回り、様々なアート作品を見せてくれた。一つ一つの作品に物語があり、一つ一つの色に意味があった。
「見て、ここにはルールなんてないんだ」彼はキャンバスの前に立ち、両腕を広げた。「アーティストは描きたいものを描き、表現したいものを表現する」
私は乾いた笑いを漏らした。「天国みたいですね」
彼は私の声に含まれた苦々しさを敏感に察知した。「君は、何か……解放される必要がありそうだな」
「私にこういう生き方が向いているとは思えません」きっちりと整えられた自分の髪に触れ、この世界で自分がどれほど場違いであるかを不意に意識した。「ルールと規則には慣れていますから」
「なら、俺が教えてやる」
彼がそう言ったとき、その瞳には何か磁力のようなものがあった。それは、ずっと昔の――職業倫理や規則に縛られる前の――自分を思い出させた。
心臓の鼓動が少し速くなった。緊張からくる速さじゃない。これは……高揚?
「もう行かないと」私は腕時計に目をやった。「案内してくれてありがとうございます」
「待って」彼はスマートフォンを取り出した。「番号、教えてもらえないか? 次はもっと素晴らしい場所に連れてってやるよ」
一瞬ためらったが、私は自分の番号を入力した。
「会えてよかったよ、先生」彼はウィンクした。「電話する」
アパートへの帰り道、私は自分が微笑んでいることに気づいた。理由もなく、ただ笑みがこぼれたのだ。
奇妙な感覚だった。
二週間後、私は再びあのカフェに座っていた。だが、今回は一人ではなかった。
啓介が向かいに座り、興奮した様子で今夜の計画を話している。これが私たちの三度目の対面であり、三度目のデート――もっとも、どちらもこれをデートだと認めてはいないが。
「今夜の展示、君のアート観を粉々にしてやる」彼の瞳は夜空の星みたいにぎらついていた。「裏路地の工房だ。学芸員も評論家もいない。あるのは、魂むき出しの創造だけ」
「ぶち壊されるのは好きですよ」私は笑った。「人の心理を分析するより面白い」
この言葉には自分でも驚いた。三ヶ月前なら、こんなことは絶対に言わなかっただろう。セラピーが私のすべてであり、使命であり、存在する理由だった。
でも今は……。
「先生は、想像してたより面白いな」啓介は手を伸ばし、私の手の甲に軽くキスをした。「最初は真面目で堅物なタイプだと思ってた」
「変わってきているのかもしれません」
これもまた真実だった。啓介と一緒にいると、私は再び呼吸をしているような気がした。カルテも、治療計画も、常に保たなければならない専門家としての距離もない。ただ……単純な幸福があるだけ。
複雑な道徳的ジレンマも、職業倫理への懸念もない。啓介は私の患者ではなく、私も彼のセラピストではない。私たちはただ、互いに惹かれ合う二人の大人だった。
「じゃあ、今夜は完全に驚く準備はできたか?」彼は私の手を握り、親指でその甲を優しく撫でた。
「待ちきれませんわ」
心からそう思った。この期待感、この純粋な興奮――こんな気持ちは、もうずいぶん長いこと味わっていなかった。
「完璧だ」啓介は立ち上がった。「会計を済ませて、それから……」
彼は突然言葉を止め、カフェの窓の外の何かに視線を固定した。
その視線を追った瞬間、私の世界は完全に凍りついた。
小野寺幸男。
彼は通りの向かいに立っていた。何度も見たことのある黒いジャケットを着て、手に何かを持っている。これは偶然の通りすがりではない――彼は……意図的にそこに立っている。
私を見つめて。
「どうしたんだ?」啓介は振り返り、困惑した表情で私を見た。「幽霊でも見たような顔してるぜ」
幽霊。
そうだ、まさにそんな感じだった。この三ヶ月で埋葬したと思っていたすべてが、突如として蘇ったのだ。
幸男はまだそこに立って、ガラス窓越しに私と視線を合わせている。彼の表情は驚きから、私には読み取れない何か別の感情へと変わった。
心臓が激しく鳴り始めた――啓介といるときに感じた高揚とは違う、パニック発作の前触れのような動悸。
どうして彼がここに?
啓介を見たの?
これは偶然、それとも……
「映奈さん?」啓介の声が私を現実に引き戻した。「どうしたんだ?」
私はできるだけ普段通りの声を出そうと努めた。「なんでもありません。ただ……知ってる人を見かけた気がして」
だが、もう一度外を見たときには、幸男の姿は消えていた。
まるで、初めからそこにいなかったかのように。
見間違いだったのかも。あれは彼じゃなかったのかも。
しかし、私の手はまだ震え、心臓はまだ激しく鼓動しており、見間違えたわけではないとわかっていた。
「本当に大丈夫か?」啓介は再び席に座り、心配そうに私を見つめた。「顔、真っ青だぞ」
「大丈夫です」私は無理に微笑んだ。「たぶん低血糖です」
だが、自分が嘘をついていることはわかっていた。
なぜなら、三ヶ月間の平穏は、あの瞬間に完全に打ち砕かれたのだから。
幸男が戻ってきた。
そして、それが何を意味するのか、私には見当もつかなかった。
