第6章
その夜七時、啓介は画材店で絵の具を選んでいた。私は彼を探し出し、倫理委員会の件を伝えるつもりだったが、そのとき電話が鳴った。
「啓介? どうしたの?」
「映奈、ちょっと変なんだ」彼の声は困惑と不安を含んでいた。「君の友達の小野寺さん、覚えてる?」
心臓が止まりそうになった。「それがどうしたの?」
「さっき、画材店で俺を見つけたんだ。君のことについて話したいって言ってきた」
私は電話を握りしめた。「何を言ったの?」
「……よくわからないことを」啓介の声が冷たくなる。「映奈、彼は本当に君の患者だったのか?」
電話の沈黙が長く続いた。
「そうよ」ようやく認めた。「昔はそうだ...
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