第117話

レックスは即座に反応した。アクセルを強く踏み込み、中央車線へと急ハンドルを切る。栗色のビュイックとは間一髪ですれ違ったが、その鼻にかかったようなクラクションの音がハイウェイに鳴り響いた。車体が体勢を立て直すよりも早く、シアがミニバンの窓枠へと身を乗り出した。

耳をつんざくような銃声に、心臓が早鐘を打った。弾丸が並走する暗色のSUVに降り注ぐ。敵は右へと回避したが、防弾仕様の車に乗っているのは私たちだけではないらしい。そのSUVは右へと進路を変え、私たちを路肩へ押し出そうと幅寄せしてきた。

「クソッ」シアが唸り声を上げ、頭からバイザーをもぎ取ると窓の外へ投げ捨てた。「囲まれたよ。レックス、早...

ログインして続きを読む