第125話

彼の手が私の足首に巻きつき、私はたたらを踏んだ。とっさに掴まれた方の足で蹴り返し、彼の並んだ歯に踵を叩き込む。力が緩んだ隙に私は足を抜き、よろめきながらも立ち上がって走り出した。

森の中へ転がり込む直前、振り返るとハヴォックの美しい笑顔が見えた。その歯も瞳も、鮮血のような赤に染まっていた。

頭の中で秒数を数え始めたが、すぐに分からなくなり、また最初から数え直す。痛みは遠い記憶となり、鈍い疼きへと変わっていた。腰の痛みはもう感じない。ただ激しく動くたびに、肉が裂けるような感覚があるだけだ。私はナイフを引き抜いていた。銀の柄が掌を焼くような熱さを放ち、その苦痛に前のめりになりそうだった。

ハ...

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