第139話

水と野草の瑞々しい香りを運んでくる夏の湿った空気は、昔から私のお気に入りだった。黄金色の草が茂るこの野原では、その匂いはとりわけ甘く感じられる。ここは私が安らぎを求めてよく訪れる場所だ。持参した柔らかいキルトの上に座りながらも、心のどこかでは素足で草の感触を味わいたいと願っていた。鞄に手を伸ばし、お気に入りのパン屋で買ったチェリーとアーモンドのクロワッサンを取り出す。あの店は、スカーレットという快活な若い女性が新しいオーナーになってからも繁盛している。彼女の試作するパンは、いつだって驚きと喜びを運んでくれるのだ。

かつてこの野原は私だけの秘密の場所だった。しかし、今こうして子供たちが走り回り...

ログインして続きを読む