第163話

【ケイレブ視点】

バンジージャンプの興奮冷めやらぬリリーが、そのまま俺の腕の中に飛び込んで、前後不覚になるほどキスをしてくれる……俺はそんな甘い妄想を抱いていた。もし雰囲気が良くなったら姿を消してくれと、事前にメリックに釘を刺しておいたというのに。だが現実は、地面に足がついた瞬間、彼女は俺を怒鳴りつけてきた。

誤解しないでほしいのだが――それがまたそそるのだ。怒っているリリーには、抗いがたい色気がある。獲物を狙うように細められた瞳、きつく結ばれた唇、微かにピクリと動く耳まで。そのすべてが彼女らしくて、俺を狂わせる。

「リリー、誇らしいよ。すごかった」立ち上がった彼女に、俺は感嘆を込めて優...

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