第206話

ダリア視点

父のためなら何でもする。父に少しでも安らぎを与えられるなら、たとえ見知らぬ「番(つがい)」と暮らすために故郷を捨てることになっても構わなかった。彼を受け入れるつもりなんて毛頭なかったけれど、それでも私はここに来た。すべては父の頼みだったからだ。だが、これはいったいどういうことだ? こんなはずじゃなかった。

さっき家まで歩いて帰る途中、気が緩んで家族のことを少し話してしまっただけでも十分最悪だった。なぜあんなことを口走ってしまったのか自分でも分からないが、間違ったメッセージを送ってしまったのは確かだ。未来を共にすることのない二人が、なぜ互いの内情を知る必要がある? それだけじゃな...

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