第209話

ローガン視点

頭の中は混乱の極みにあった。思考は指の間からすり抜け、現実をつなぎとめることすらままならない。気がつけば、彼女を初めて見たあの瞬間に意識が引き戻されている。俺の――いや、俺たちの――「番(つがい)」を見つけるなんて、ずっと遠い夢物語だと思っていたし、あえて考えないようにしてきたことだった。たとえ想像していたとしても、彼女のような女性だとは思いもしなかっただろう。目の前に立つ小柄な雌狼は、俺が夢見ていた以上の存在だ。まるで月の女神が、俺の愛するすべての要素を織り上げ、一人の完璧な女性を作り出したかのようだった。

「たまらないな……信じられないほどいい匂いだ。この香りに溺れそうだ...

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