第250話

【フィニアン視点】

彼女の鈴のような声が家の中に響き渡り、父を呼ぶその声と共に、春のささやきのような香りが漂ってきた瞬間、俺の中で何かが燃え上がった。まるで電流の走る導線が火花を散らすように、全身が反応したのだ。俺には運命の番がいる。もう彼女に対してこんな感情を抱くべきではない。だが、ジョヴィへの引力がどれほど強くとも、俺たちの絆がどれほど固く結ばれていようとも、ダリア・スターリングを目にした瞬間に湧き上がるこの感情を押し殺すことなど、何ものにもできはしなかった。

何年もの間、彼女は俺の全てだった。そして今になってもなお、論理や誠実さを裏切って、心のどこかで信じられずにいる。彼女が再び俺の...

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