第290話

ダリア視点

会ったばかりの人たちの顔を覚えるのに必死で、まだ目が回るような気分だった。頭はふわふわして、誰の顔もぼやけて見える。一息つく時間がどうしても必要だった。それなのに、彼らは今夜中に群れのすべての狼を私に紹介するつもりらしい。ちょうど休憩を頼もうとしたその時、まるで私の気持ちを見透かしたかのようにニコライが現れた。

「こんばんは、ルナ」

彼は滑らかにそう言うと、私の手を取り、その甲にうやうやしくキスを落とした。その仕草に、私の二人の番(つがい)から低く独占欲に満ちた唸り声が上がる。ニコライはそれを見て、ただニヤリと笑うだけだ。

「お楽しみのところ申し訳ありませんが、アルファたち...

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