第294話

ダリア視点

ブラッド・ムーンからクリスタル・ムーンのパック領地まで、普段なら一時間かかる道のりを、記録破りの三十分で走破した。女神様、狼の反射神経を持っていて本当によかった。診療所の駐車場に滑り込むやいなや、トラックのギアをパーキングに叩き込み、キーを挿したまま無造作に飛び出した。一刻の猶予もなかった。

速度を落とすことなく正面玄関を突破し、救急待合室を兼ねた混雑する廊下を縫うように進む。顔なじみの若い受付の女性は、私が彼女の目の前で急停止しても眉一つ動かさなかった。

「キアラ・ウィンズローは?」切迫した声で尋ねる。

「すでに手術中です。第二手術室よ」彼女は躊躇なく、即座に答えた。

...

ログインして続きを読む