第301話

ダリア視点

番(つがい)たちのことを考えると、顔が火照り、心が落ち着かなくなる。スマホで時間を確認すると、もうすぐ昼食の時間だった。食堂で落ち合う予定だったけれど、私の内側で疼いているのは、単なる食欲ではない。少し早めに二人を迎えに行こうと決めた。執務室を出る前に捕まえられれば、そのまま二階へ――もっと甘く背徳的なひとときへ――誘い込めるかもしれない。

だが、部屋に近づくにつれ、奇妙な違和感を覚えて足が鈍った。声がする。くぐもった低い声だ。彼らの執務室は防音仕様になっているはずだから、ドア越しに囁き声さえ聞こえるなんて普通ではない。慎重に近づくと、ドアの隙間から細い光が漏れているのが見えた...

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