第344話

ダリア視点

「揺らさないように気をつけてくれ」ローガンの静かな声が、意識の霧を切り裂いて聞こえた。

私を運んでくれるリアムの逞しい強さを感じ、その香りが鎮痛剤のように私を包み込む。空気の肌触りで、ブラッド・ムーンに戻ってきたことがわかった。本来なら、次期ルナとして自分の足で堂々と歩いて入るべきだと心のどこかで思ったけれど、そんな気力は湧かなかった。つがいの腕の中があまりにも心地よくて、どうでもよくなってしまったのだ。車の中であんなことをした後だもの、情事の匂いをプンプンさせてパックハウスに入るのは理想的とは言えない――誰かと顔を合わせる前に、私たち全員、シャワーが必要だった。

その夜の記...

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