第361話

【フェイラン視点】

閉ざされたオフィスのドアにゴムボールが当たる鈍い音だけが、静寂を満たしていた。投げて、跳ね返り、受け止める――その繰り返し。今日の俺に残された気力はそれだけだった。それと、彼女への想いにとらわれ続けることだけ。リア。

机の端の書類の山に半分埋もれた封筒。それでも繊細な銀のエンボス加工が見えた。ダリア・スターリングとブラッドムーン・アルファたちの「結合の儀式」への招待状だ。今朝届いたそれは、死角から突っ込んできたトラックに跳ねられたような衝撃を俺に与えた。

予想しておくべきだった。避けられないことだとわかっていた。それでも、俺はもっと時間があるという妄想にしがみついてい...

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