第89話

「クソッ、ホテルまで5時間、ハイ・テーブルまではもっとかかるぞ」キーランは小声で毒づきながら、手当たり次第にペットボトルの水を小さなカートに放り込んだ。

事態が深刻でなければ、笑い話で済んだかもしれない。

私たちは一糸まとわぬ姿で目覚めた。人狼が人の姿に戻る時はいつだってそうだ。森の中を1時間ほどさまよい歩き、ようやく標識のある舗装道路に出た。全裸での森のハイキングなんて、二度と御免だ。それから30分後、この小さな町で唯一まともに機能していそうな店を見つけた。

駐車場の入り口にある看板には、色褪せた文字で「ミニマート」と書かれているだけで、ここが何の店なのかを示すものは他になかった。ガソ...

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