第90話

人目を忍んでの移動は、解放感と同時に、身を晒しているような不安もかき立てた。当面は周囲に溶け込むのが最善策だが、護衛を乗せた三台のセダンに守られていたあの安心感が恋しかった。キーランがセバスチャンの友人と声を潜めて話している間、私は目を閉じ、意識を漂わせた。イーサンと私を繋ぐ絆の糸をしっかりと手繰り寄せ、何かが――どんな些細なことでもいい――伝わってくるのを待った。心臓に送り込まれる毒を追い払ってくれるような、絆を通じた動きや揺らぎを求めて。

絆からは何も感じられなかったが、それでも挫けたりはしない。絆はまだそこにあり、確かに生きて存在している。悪夢と囁くような脅迫に満ちた惨めな仮眠をとった...

ログインして続きを読む