第7章

 純一はメスを固く握りしめていた。その刃は蛍光灯の光を浴びて、冷ややかな輝きを放っている。

 制止しようとする助手を乱暴に突き飛ばし、彼は研究室のドアをバタンと閉めると、重い南京錠をガチャンと掛けた。

 密室と化した空間に、私と彼の二人だけが取り残される。

 彼は一歩、また一歩と距離を詰め、そのメスを私の頸動脈に突きつけた。氷のような刃先が皮膚を裂き、じわりと血が滲むのを感じる。

「どうしてだ」

 彼の声は震えていた。

「なぜ他の男と結婚した? なぜ俺の息子に、違う男をパパと呼ばせるんだ!」

 血走った彼の両眼を見つめ返し、私はひどく落ち着いた声で答えた。

「純一、私たちはと...

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