第190章

江口美咲は終始眠っていた。

車が病院の入り口で停車するまで、ずっと目を覚まさなかった。

高橋隆司はしばらく迷った末、やはり彼女を起こす気にはなれず、運転手に車のドアを開けるよう指示し、自分の上着を脱いで、そっと江口美咲に掛け、抱きかかえて車を降りた。

彼らが到着したのは遅い時間で、病院に着いた時には救急科しか診察していなかった。

高橋隆司は受付を済ませ、江口美咲を抱いたまま診察室へと向かった。

部屋に入ってようやく江口美咲はぼんやりと目を覚まし、数秒間反応が遅れた後、自分がまだ男性に抱かれたままで、医師が向かい側に座っていることに気づいた。

それに気づいた瞬間、江口美咲の顔は真っ...

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