第5章

 鉄筋の赤錆が掌に食い込み、焼けるように痛む。

 下を見下ろすと、ここは四階の高さで、真下はコンクリートの地面だ。落ちれば、即死しなくても半年は病院のベッドで寝たきりだろう。

 すぐそばから、セリーナの悲痛な叫び声が聞こえてきた。

「マーカス! 早く助けて! もう持ちこたえられない!」

 彼女は今にも崩れ落ちそうな手すりにしがみつき、ボロボロと涙を流している。

 間もなく、マーカスが部下たちを引き連れて屋上へ駆け込んできた。彼は真っ先にこちらへ視線を向けた。

 しかし、私の中には得体の知れない怒りだけが湧き上がっていた。どうして彼に選ばせなきゃならない? 私は誰かの助けを待つだけ...

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