第9章

三ヶ月後、白峰町はまるでおとぎ話の世界のようだった。

メインストリートには黄金色の稲穂の飾りが並び、街灯の間には温かみのある白いイルミネーションが飾られている。町の広場に設けられた屋台からは焼き芋と甘酒の匂いが漂い、収穫祭が始まるまでまだ一時間もあるというのに、浴衣姿の子供たちがもう走り回っていた。

私は『ひだまり』の戸口に立ち、お祭りの人波を眺めながら、この大きな変化がまだどこか信じられずにいた。

「そのドア枠に穴が開くぞ」亮介が甘酒を二つ持って、背後から声をかけた。

「全部、目に焼き付けてるだけ」私はありがたく甘酒を受け取った。「覚えてる? あなたが初めてここに来たとき、...

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