第7章
あの車には見覚えがあった。
青葉州ナンバーをつけた黒いSUV。だが、森で働く人間が乗るにしては綺麗すぎた。運転席のドアが開き、背の高い男が降りてくる。何時間も運転してきたかのように、ぐっと背伸びをした。
一瞬、誰だか分からなかった。
蓮。
だが、そこに立っていたのは、十年前に大学へ旅立った、あの十七歳の少年ではなかった。彼の姿は、一人の「男」へと見事に変貌を遂げていたのだ。
広くなった肩幅は頼もしさを物語り、自信に満ちた足取りは揺るぎない覚悟を思わせる。誰もが思わず振り返るような、圧倒的な存在感。昔から変わらぬ物静かな優雅さはそのままに、それ以外のすべてが、別人のように...
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