第11章

はっと目を開けた。向かいの鏡に映っていたのは、四歳くらいの小さな女の子――お母さんが買ってくれたワンピースを着て、絵筆を握っている私だった。

「絵梨、どうして自分を傷つけるの?」四歳の私は、無垢で大きな瞳を瞬かせた。「どうして絵を描かないの?」

私は凍り付いた。夢を見てるのかな? でも、その子はとてもはっきりしていて、あまりにも……綺麗だった。

「絵を描く?」私は苦しそうに笑った。「楽しい絵なんて、もうどんな感じだったか忘れちゃった。私に描けるのは、痛みや憎しみ、健太郎が望むものだけよ」

「覚えてるよ!」小さな女の子は目をキラキラさせて言った。「絵を描くっていうのは、色を使...

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