第5章
十分に気をつけていたつもりだった。
毎晩、先輩がくれた絵を、人生でたった一つの宝物を隠すように、枕の下の一番奥深くにしまい込んでいた。絵の中の笑っている自分の顔を見るたびに、胸に温かいものがこみ上げてくる――私も、こんなに幸せそうに笑えるんだって。
でも、私はまだ甘すぎた。
夜中の十一時、怒号に目を覚まされた。
「絵梨!」
寝ぼけ眼で目を開けると、お父さんが部屋に怒鳴り込んできた。その手には、あの絵が握られていた。私が何よりも大切にしていた、あの絵が。
顔が真っ青になった。
「よくも俺を裏切ったな!」お父さんの声は、まるで地獄から這い出てきた悪魔のようだった。「...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
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