第8話
しばらくして、彼はタバコを消し、ポケットからベルベットの箱を取り出して開けた。中にはダイヤの指輪が入っていた。
喉が詰まった。あの夜、私が売ってしまった結婚指輪だ。誠吾が買い戻してきたのだ。
誠吾は私の顔をじっと見つめ、わずかな表情の変化も見逃さない。
まるで私の肉体の隅々まで見透かそうとしているかのようだった。
しばらくして、彼は淡々と言った。「手を差し出せ。指輪をはめて、それから家へ帰れ」
「これまでのことはなかったことにする。君は相変わらず深津奥様だ」
彼が珍しく寛大に許してくれたのに、私は拒んだ。
私は手のひらを握りしめた。その直接的な動作が、彼への拒絶を物語っていた。
誠吾の忍耐にも...
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