第6章
霧崎総合病院の手術室は、北極よりも冷たく感じられた。手術台の上に横たわり、頭上の無機質なライトの眩しい光を睨みつける。心臓の鼓動が、雷鳴のように耳元で激しく打ち鳴らしていた。
「羽澄さん、最後にもう一度だけ確認させてください」
真田先生は手袋を外しながら、深く眉を顰めた。
「本当に麻酔なしでいいんですか? この処置は激痛を伴いますよ」
私は首を巡らせて彼を見た。自分でも他人のもののように感じるほど、冷静な声が出た。
「いいえ。すべてを鮮明に感じ取る必要があるんです」
「しかし……」
「先生」私は彼の言葉を遮った。「痛みが必要なんです。それから、胎児に関するあらゆ...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
縮小
拡大
