第109章 彼に最後に会う

北条千雪にとって、その知らせは朗報だった。浅倉昭彦には、きれいさっぱり自分のことを忘れてほしい。できることなら、永遠に思い出さないでいてほしい。

そうでなければ、彼は新しい人生を歩けない。彼女という影に、もう邪魔されずに。

「……よかった。これで、よかったんだ」

鷹司恭一は険しい顔のまま言った。本来なら浅倉昭彦と今後のことを相談するつもりだった。だが彼は記憶を失ってしまった。計画は、ここでいったん頓挫する。

鷹司ひとりの力では、北条千雪を連れ出すことなど到底できない。練り直すしかなかった。

「浅倉家は、明日の朝いちで国外の病院へ移すつもりらしい。……たぶん、この先ずっと帰国させない...

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