第130章 彼女を好きになるはずがない

北条克己は、やり場のない思いで彼女を見つめた。

あれほど穏やかで、よく気の利く妻が――どうして、ここまで冷酷になってしまったのか。どう考えても分からない。

「涼子、あと一日だけだ。明日の朝一番で転院する。それでいいだろ?」

北条克己が待ちたかったのは、北条千雪の手術が終わる、その瞬間だけだった。

だが北条涼子は、彼が首を縦に振らないと見るや、くるりと背を向けてテーブルの上の果物ナイフを掴み、ためらいなく自分の喉元へ突きつけた。

その光景に、北条克己の全身がぶるりと震える。

「涼子、何してるんだ! やめろ、早く下ろせ!」

北条涼子は目を見開き、決裂の色を滲ませる。

「あなたが私...

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