第179章 彼女こそが最も徹底的に負けた人だ

北条千雪はふらつく足取りでバスルームへ入っていった。扉口でよろめき、危うく転びそうになる。

鷹司京介はほとんど反射で手を伸ばし、支えようとした。だが、半ばまで出したところでぴたりと硬直し、次の瞬間には乱暴に引っ込める。何事もなかった顔を作りながら、胸の奥だけがざらついた。

――北条千雪なんて、転んで死んだって自業自得だ。

なのに、どうして今、咄嗟に心配した。

……面倒な女だ。

シャワーの冷水が容赦なく降り注ぐ。北条千雪は両腕で自分を抱きしめ、肌を何度も何度も擦った。痕跡も屈辱も、全部洗い流せるみたいに。

けれど、どれだけ洗っても、骨の髄に染みついた「汚れ」の感覚だけは消えない。

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