第19章 彼女が死んでみんなが喜んだ

篠原茉優は保温ポットを提げてベッドの脇まで来ると、ふたを開けた。途端に、濃い人参の香りがふわりと広がる。彼女はスプーンでひとさじすくい、北条千雪の唇元へ運んで、やさしく言った。

「千雪。あなたのためにわざわざ買ってきた人参よ。何時間もコトコト煮込んだの。すごく滋養があるから」

北条千雪の瞳が、ようやくわずかに動いた。

その視線はスプーンの湯気へ落ち、次いで、ゆっくり篠原茉優の顔へ移る。

自分よりも「お姉ちゃん」に似ている、その顔。

けれど浮かぶ笑みは、言いようのない作り物だった。

――この人は、お姉ちゃんを真似ている。

「どうして飲まないの?」篠原茉優はわざと声を張った。「こん...

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