第21章 本当に人を誘惑するのが上手いな

北条千雪の身体は、時間が経つほど硬直していった。唇が、がちがちと震え続ける。

空が白みはじめたころ、鷹司京介は窓辺に立っていた。――昨夜、彼女は戻ってこなかった。

出社すると、吉村毅が本日の予定を報告してくる。だが鷹司京介は上の空で、言葉だけが耳をすり抜けた。

外では雨が降りはじめ、冷たい風がひとすじ吹き込む。鷹司京介のうなじが、ひやりと冷えた。

吉村毅が小走りで窓を閉め、何気ない調子で言う。

「予報じゃ今日は冷え込むそうですし……奥様、雑木林で大丈夫でしょうか」

昨日、北条千雪をあそこへ連れて行ったのは、吉村毅だった。

ただ――北条千雪は、動画の中で罵られていたような人間には...

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