第56章 泥棒のように

北条千雪は嗚咽して身体がひきつりそうになるのを堪えながら、声だけはどうしても殺した。

母を起こしてしまえば、追い出される。そう分かっている。

どれくらい経ったのか。窓の外がうっすら白みはじめて、千雪は帰らなきゃ、と悟った。

けれど、もう限界だった。全身から力が抜け、指一本動かせない。

床へへたり込み、そのまま崩れる。痛みで目の前が真っ暗になった。

唇を噛んで立ち上がろうとする。だが、何度やっても身体が言うことをきかない。

母が寝返りを打った。今にも目を覚ましそうで、千雪は心臓が飛び出しそうになる。

だめ。これじゃだめだ。

もうすぐ母が起きる。見つかったら、今後二度とここへ来ら...

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