第57章 俺が飼っている犬は悪くないだろう

姉の死が家族にもたらした打撃は、あまりにも大きかった。

いまだ誰ひとり、その悲しみから抜け出せずにいる。

北条千雪も、例外じゃない。

ただ憎いのだ。

なぜ自分だけ、あのとき生き残ってしまったのか。

――自分こそ、あの大火事で死ぬべきだった。

姉さえ生きていれば、きっと世界中が幸せだったのに。

「千雪……お前、怪我してたのに、父さん、見舞いにも行けなかった。……恨むな」

北条克己は、何度も病院へ行こうとした。けれどそのたびに北条涼子に見つかって、ひどく叱られた。

長女を失ってからの涼子は、身体も心も壊れかけていた。克己はこれ以上刺激したくなくて、歯を食いしばって我慢してきたの...

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