第6章 彼女を迎えたのは、地獄だった

刺すような寒気が血の流れに逆らって四肢の隅々へ潜り込み、北条千雪の意識はほどけ始めた。視界の光と影は滲み、重なり合って揺れる。

ただ一つ、変わらないものがある。

お姉ちゃんの、あの優しい顔だけ。

お姉ちゃん……待ってて。

サメの背びれが波を裂く。条の模様が水面の光を受けて冷たく光り、まるで死神が差し出す鎌だった。

北条千雪はゆっくりと目を閉じる。もうすぐ、お姉ちゃんとおばあちゃんに会える。

――鋭い歯が肌を割こうとした、その瞬間。

横から腕が伸び、後ろ襟をがしっと掴むと、力任せに彼女をボートの方へ引いた。

人垣の向こうで悲鳴が上がる。

「恭一様が飛び込んだ! サメがいる、早...

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