第68章 彼を殺させてくれ

鷹司京介は動かない。鷹司恭一も動かない。

北条千雪はなおさらだった。足が床に縫い付けられたみたいに硬直し、恐怖で目を見開く。

鷹司京介に手を出す人間など、今まで一人もいなかった。まして――本当に殴り当てるなんて。

それが何を意味するか。

死にに行く、という意味だ。

鷹司京介は御曹司だ。触れるどころか、機嫌を損ねさせただけで、相手は世界から消える。

その鷹司京介を、鷹司恭一は殴った。

空気が凍りつく。何かが、音もなく消えていくような感覚。

千雪の呼吸が浅く、遅くなる。鷹司京介が彼女の手を放した瞬間、理解した。

――本当の狩りが、始まる。

鷹司恭一は、まだ事の深刻さに気づいて...

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