第80章 彼女は死に場所を求めている

野原忍は隠し立てすることもできず、ただちにこの件を鷹司京介へ報告した。

鷹司京介はその知らせを聞いた瞬間、ベッドの上で跳ね起きる。

「お前、どういう仕事してる。あいつを逃がすなんて……!」

「申し訳ありません、鷹司社長。監視カメラを確認したところ、北条さんが自分で檻を開けて――」

「言い訳はいい」鷹司京介の声が、氷みたいに落ちた。「手段は問わない。お前ら全員が命を張ってでも、あいつだけは生かして連れ戻せ」

北条千雪は死なせない。少なくとも、今は――。

密林を抜ける風に、狼の遠吠えが混じる。

北条千雪はそれを聞いていないみたいに、空っぽの手を持ち上げたまま、ふらふらと森の奥へ走っ...

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