第85章 君はもっと良い人生に値する

午後の陽射しはやわらかく、ぬくもりを帯びていた。看護師が車椅子を押し、入院棟の中庭をゆっくり横切っていく。

北条千雪は分厚い毛布にくるまり、横顔は透けそうなほど蒼白だった。視線は相変わらず散っていて、空っぽのまま前方を見つめている。焦点が合っていない。

看護師は日当たりのいい場所を選び、車椅子を止めた。

「北条さん、今日は陽射しがすごく気持ちいいですね。これからも、よくこうして日向ぼっこしましょう」

返事はない。看護師はそれにも慣れていて、角度を少し整えると、明るい声のまま続けた。

「私、検査の報告書を取りに行ってきますね。すぐ戻りますから、ここで待っててください。絶対に車椅子、動...

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