第98章 篠原茉優のチャンスが来た

手術室の赤いランプは一晩中点きっぱなしだった。

廊下に漂う消毒液の匂いに血の生臭さが混じり、九時間ものあいだ、薄く重く張りついている。

午前五時。ようやく手術室の扉が押し開けられた。

執刀医はマスクを外し、疲労に濁った声の奥に、かすかな安堵を滲ませる。

「不幸中の幸いです。北条さんは大量出血で、輸血パックを前後で八つ使いました。最後は病院が手配した黄金の血が間に合って、どうにか三途の川から引き戻せた。ただ、まだ危険期は脱していません。ICUで経過観察になります」

鷹司京介は喉仏を上下させた。指先が白くなるほど拳を握りしめ、それでも歯の隙間から絞り出したのは一言だけ。

「……分かっ...

ログインして続きを読む