チャプター 189

浴場は予想以上に暖かく、湯の熱気が鉱油と潮の微かな香りと混じり合っている。女たちが浴槽でくつろぎ、その尾が薄暗い照明の中で煌めく。柔らかな話し声や時折漏れる笑い声が壁に反響しているが、足を踏み入れた瞬間、視線が自分に集まるのを感じた。私は居心地の悪さを悟られないよう努め、その場に溶け込むことに意識を集中させる。

髪飾りの紐を緩めて外し、黒い波打つ髪を肩に落とす。私は慎重に、その王冠のような凝った装飾品を、入り口からよく見える石棚の上に置いた。もし衛兵が確認に来ても、これを見ればすぐに私がただくつろいでいるだけだと思うだろう。まさか、そんなことができるはずもないけれど。

室内を見回すと心臓が...

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