第二七章

目を開けるよりも先に、その恐怖はやってきた。

悪夢の余韻ではない。暴れることも、あえぐことも、冷や汗をかくこともない。ただ、胸の奥に石のように重苦しい不安が居座っているだけだ。私は身じろぎもせず、天井を見つめる。何かがおかしい。

そして、気づく。隣の空間が空っぽだ。ぬくもりがない。呼吸のリズムも聞こえない。ウェイクがいない。

私は静かに布団を跳ねのけ、上体を起こす。走りに行っただけかもしれない。眠れなかっただけかもしれない。だが、そうは思えない。今回は違う。何かが変わってしまった。血液の中で、ピリピリとした違和感が警鐘を鳴らしている。

もしここでの時間が終わろうとしているのなら――そし...

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