チャプター 292

アトラスは海溝から立ち上がっているというより、そこに「聳（そび）え立って」いた。切り立った断崖に、太古の獣の骨のように刻み込まれている。火山岩を削り出した巨大な尖塔が、重力に逆らうように上へ下へとねじれながら伸び、壁に埋め込まれた発光藻のランタンが放つ光で柔らかく輝いている。

深い青と緑の光が海流の中で踊り、スローモーションで瞬く星座のように、暗い建築物に淡い輝きを投げかけていた。

ウェイクの故郷がどんな場所か想像もつかなかったけれど、これは予想外だった。

美しい。あの、残酷で媚びないものだけが持つ美しさだ。優しさはどこにもない。すべての建物、すべてのテラス、崖と崖を結ぶ曲がりくねった橋...