チャプター 296

アクセルに引きずり込まれたその酒場は、まるで激怒した神が海溝の壁を直接えぐり取って作ったかのような場所だった。頭上にはギザギザとした石柱がそびえ立ち、藻でぬるぬると光っている。店全体が低く一定の振動を響かせていて、まるで岩そのものが生きているかのようだ。店内は満員で騒がしく、天井から吊るされた発光クラゲのオーブが、あたり一面をシュールな青緑色の靄で照らし出している。

アクセルは、人生のあまりに多くの時間をこういう場所で過ごしてきた者特有の、気負いのない慣れた足取りで私をカウンターへと導いた。彼はカウンターをパンと叩き、発音すら見当もつかない名前の酒を二つ注文する。バーテンダー――ずんぐりとし...

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