チャプター 308

馬車は、絵画の中を漂う夢のように、エステリスの大通りを滑るように進んでいく。通り過ぎる建物はどれも、月光と歌から切り出されたかのような美しさだ。貝殻が象嵌されたアーチ状の出入り口。屋上から王冠のように咲き誇るステンドグラスのドーム。見たこともない色彩の魚たちが、完璧に計算された群舞のようにきらめく窪みを縫い、この水中の夢幻郷全体を支えるアラバスターの柱の間を泳ぎ回っている。

だが、私はそのどれも楽しむことができない。

馬車の中には、どうしても振り払えない重苦しい緊張が漂っているからだ。

ペトラは私の隣で静かに座り、膝の上で華奢な手を重ねている。その視線は伏せられ、まるで発言の許可を待ってい...

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